【業界分析】産業連関表からみる飲食料品業の現状

【産業連関表】飲食料品業界の分析 産業連関表分析

産業連関表とは、各産業部門で財・サービスがどのように生産され、販売されたかという「つながり」を金額で示した統計です。

一般的には、国や都道府県等の施策やイベントの経済波及効果を算出する場合に使用されることが多いように思います。

一方、産業連関表は「つながり」を金額で示しているという特性上、各業種のお金の流れを把握することができるため、自社の経営に活かすことも可能となります。

この記事では、産業連関表を使って飲食料品業の状況を、中分類または小分類ごとにみていきたいと思います。

用語

文章中にある用語の意味は以下の通りです。

 中分類   ・・・事業所を経済活動別に分類しており、産業連関表では96業種に分かれています。
 小分類   ・・・事業所を経済活動別に分類しており、産業連関表では185業種に分かれています。
 内生部門  ・・・中間需要と中間投入の部門が内生部門で、いわゆる産業間の取引部門
 国内最終需要・・・個人消費(家計消費)や、建物、機械などの設備投資等を含めた需要
 需要合計  ・・・内生部門や国内最終需要を合わせた総需要


1.飲食料品業界の需要

中分類・小分類ごとに需要を見ていきます。

食料品・たばこ

【中分類】
・2020年の「食料品・たばこ」の需要額は前年(2019年)と比べて減少しています。

【小分類】
・小分類でみると、「その他の精穀」「その他の製粉」の需要が前年比110%を超えています。
・一方、「その他の食肉」「と畜副産物」「そう菜・すし・弁当」は前年比90%未満となっています。

業種需要合計
2020】
(百万円)

需要合計【2019】
(百万円)
※需要前年比(%)
内生部門計

(百万円)
国内最終
需要計
(百万円)
輸出計

(百万円)
【中分類】
食料品・たばこ38,176,18513,113,23724,456,780606,16839,906,03095.7
【小分類】
牛肉1,531,541685,717820,99624,8281,660,64692.2
豚肉1,291,913708,333581,9211,6591,381,30093.5
鶏肉681,987 350,903328,826 2,258 670,084101.8
その他の食肉32,93422,366 10,5531536,74389.6
と畜副産物240,055173,48760,8115,757270,46088.8
飲用牛乳551,864180,973370,363528581,10095.0
乳製品1,886,344915,623950,15920,5621,888,60399.9
その他の畜産食料品1,755,292 349,316 1,404,228 1,748 1,776,92398.8
冷凍魚介類2,139,885 699,066 1,340,978 99,841 2,254,591 94.9
塩・干・くん製品463,937 111,485 341,824 10,628 512,31590.6
水産びん・かん詰154,758 25,363 127,2852,110 161,09196.1
ねり製品332,460 66,677256,388 9,395 365,48091.0
その他の水産食料品1,199,452272,260892,116 35,0761,327,52790.4
精米2,135,032795,8571,333,2255,9502,222,98396.0
その他の精穀41,249 38,647 2,567 35 34,882118.3
小麦粉466,144445,144 13,798 7,202 470,11899.2
その他の製粉174,595163,720 10,578 297 129,917134.4
めん類1,159,952231,385 910,29018,2771,099,692105.5
パン類1,840,998207,9591,626,5906,4491,987,87392.6
菓子類3,524,246273,9223,165,09585,2293,893,33990.5
農産保存食料品1,379,471461,146902,14116,1841,473,82593.6
精製糖290,864268,15622,267441322,99890.1
その他の砂糖・副産物66,49965,6647627369,52095.7
でん粉198,551196,7891,086676 217,30591.4
ぶどう糖・水あめ・異性化糖158,648156,0969921,560167,60194.7
植物油脂480,235382,57289,7407,923476,220100.8
動物油脂62,560 55,946(579)7,19360,784102.9
加工油脂178,415162,49914,2641,652188,37894.7
植物原油かす261,504250,35110,863290245,751106.4
調味料1,891,182702,3731,132,79356,0161,961,57096.4
冷凍調理食品613,269286,392326,528349630,25997.3
レトルト食品257,60761,348196,20257259,52999.3
そう菜・すし・弁当2,626,256134,5782,491,4412372,954,54488.9
その他の食料品3,165,6301,822,2641,213,725129,6413,073,083103.0
飼料1,525,7281,356,264158,63810,8261,511,435100.9
有機質肥料47,50532,59613,6341,27552,21691.0
たばこ3,367,62303,333,69233,9313,515,34595.8

飲料

【中分類】
・2020年の「飲料」の需要額は前年(2019年)と比べて減少しています。

【小分類】
・小分類でみると、「ウイスキー類」の需要が前年比110%を超えています。
・一方、「清酒」「ビール類」「製氷」は前年比90%未満となっています。

業種需要合計
2020】
(百万円)

需要合計【2019】
(百万円)
※需要前年比(%)
内生部門計

(百万円)
国内最終
需要計
(百万円)
輸出計

(百万円)
【中分類】
飲料7,360,5012,063,4465,173,075123,9807,877,38993.4
【小分類】
清酒269,34779,642170,28319,422327,23882.3
ビール類1,040,195644,417388,6757,1031,254,34082.9
ウイスキー類325,716115,854186,27323,589291,958111.6
その他の酒類1,745,251386,1211,346,94112,1891,770,13798.6
茶・コーヒー852,236408,577412,19131,468891,26195.6
清涼飲料3,077,201388,2282,658,81230,1613,282,25593.8
製氷50,55540,6079,9004860,20084.0

1-1.飲食料品業のの販売先業種

どのような業種への販売が多いか把握するために、中分類ごとに販売先の上位10業種をみていきます。

食料品・たばこ

・構成比をみると、「食料品・たばこ」が内生部門全体の47.9%、「宿泊・飲食サービス」が29.3%と高くなっています。
・一方、「宿泊・飲食サービス」は前年比76.1%と、2019年と比較して減少幅が大きくなっています。

 


販売先 上位10業種
食料品・たばこ 宿泊・飲食サービス農林業医療・福祉飲料教育漁業化学最終製品(医薬品を除く。)医薬品研究内生部門計
2020年
(百万円)
6,275,9833,841,0951,240,421568,238492,490175,822125,858113,48975,62366,89213,113,237
2019年
(百万円)
6,418,8295,047,9901,243,554560,431521,132182,254131,100118,00875,01367,52714,522,859
※2020年
構成比
(%)
47.929.39.5 4.33.8 1.31.00.90.60.5100.0
※前年比
(%)
97.876.199.7101.494.596.596.096.2100.899.190.3

飲料

・構成比をみると、「宿泊・飲食サービス」が内生部門全体の73.7%、「飲料」が18.1%と高くなっています。
・一方、前年比をみると、「宿泊・飲食サービス」「その他の対個人サービス」「運輸附帯サービス」は、2019年と比較して減少幅が大きくなっています。
・特に、「運輸附帯サービス」は、前年比43.5%と減少幅が大きくなっています。


販売先 上位10業種
宿泊・飲食サービス飲料医療・福祉食料品・たばこ漁業その他商業その他の対個人サービス教育運輸附帯サービス内生部門計
2020年
(百万円)
1,519,919373,65864,52850,26217,46514,6898,8616,8232,4042,0002,063,446
2019年
(百万円)
2,141,362382,57662,79451,28219,17614,7689,1798,8022,4194,5982,699,522
※2020年
構成比
(%)
73.718.13.12.40.80.70.40.30.10.1100.0
※前年比
(%)
71.097.7102.898.091.199.596.577.599.443.576.4

1-2.飲食料品業界の販売先業種-前年比伸び率

どのような業種に対する販売が伸びているか把握するために、中分類ごとに販売先業種前年比伸び率(上位10業種)をみていきます。

食料品・たばこ

・「石油製品業」「公務」「衣類・その他の繊維製品業」の前年比伸び率が高くなっています。

 


販売先前年比(伸び率) 上位10業種
石油製品公務衣服・その他の繊維既製品有機化学工業製品(石油化学系基礎製品・合成樹脂を除く。)医療・福祉医薬品農林業研究商業食料品・たばこ内生部門計
前年比
(%)
121.7118.3110.6102.8101.4100.899.799.198.797.890.3

飲料

・「宿泊・飲食サービス」「飲料」の前年比伸び率が高くなっています。

 


販売先前年比(伸び率) 上位10業種
宿泊・飲食サービス飲料医療・福祉食料品・たばこ漁業その他商業その他の対個人サービス教育運輸附帯サービス内生部門計
前年比
(%)
138.2114.4103.9102.899.599.498.097.796.796.576.4

2.飲食料品業界の費用構成

中分類ごとに費用の構成をみていきます。

食料品・たばこ

・「国内生産額」は、31,076,320百万円となっています。
・「雇用者所得」は、国内生産額全体の15.5%を占めます。

国内生産額

内生部門計粗付加価値
部門計

雇用者所得営業余剰その他
金額(百万円)31,076,32020,708,74110,367,5794,829,8542,042,1193,495,606
構成比(%)100.066.633.415.56.611.2

飲料

・「国内生産額」は、6,820,238百万円となっています。
・「雇用者所得」は、国内生産額全体の11.2%を占めます。

国内生産額

内生部門計粗付加価値
部門計

雇用者所得営業余剰その他
金額(百万円)6,820,2383,337,3243,482,914764,107782,1931,936,614
構成比(%)100.048.951.111.211.528.4

2-1.飲食料品業界の仕入先業種

どのような業種から仕入が多いか把握するために、仕入先業種の上位10業種をみていきます。

食料品・たばこ

・仕入先業種は、「食料品・たばこ」、「農林業」の割合が高くなっています。


調達先 上位10業種
食料品・たばこ 農林業商業漁業道路輸送(自家輸送を除く。)その他の対事業所サービスプラスチック製品紙加工品電力広告内生部門計
2020年
(百万円)
6,275,9836,089,7592,268,748906,480653,639561,456466,400400,947318,568276,42920,708,741
2019年
(百万円)
6,418,8296,203,0702,334,834990,836667,097576,904494,267433,463337,222314,98821,456,646
※2020年
構成比
(%)
30.329.411.04.43.22.72.31.91.51.3100.0
※前年比
(%)
97.898.297.291.598.097.394.492.594.587.896.5

飲料

・仕入先業種は、「食料品・たばこ」、「商業」の割合が高くなっています。


調達先 上位10業種
食料品・たばこ 商業飲料その他の金属製品プラスチック製品農林業紙加工品広告道路輸送(自家輸送を除く。)その他の対事業所サービス内生部門計
2020年
(百万円)
492,490399,254373,658355,767278,591240,764186,936168,977103,12995,7813,337,324
2019年
(百万円)
521,132395,266382,576412,363286,198263,606206,748195,585108,40196,6243,569,315
※2020年
構成比
(%)
14.812.011.210.78.37.25.65.13.12.9100.0
※前年比
(%)
94.5101.097.786.397.391.390.486.495.199.193.5

※本記事のデータは、令和2年延長産業連関表(平成27年基準) より筆者作成

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